今回は『スクワットのバイオメカニクス』です。
スクワットは、BIG3の一つであるメジャーなトレーニング種目です。
スクワットはやり方次第で鍛える場所が変わり、誤ったポジションで負荷をかけ過ぎるとケガにも繋がる難しい種目です。
バイオメカニクスの視点からスクワットを解説していきたいと思います。
バイオメカニクスの理解
バイオメカニクスの理解という言葉では、少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、股関節・膝関節にどれだけの負荷がかかっているかというのは
ポイント
重心から股・膝関節までの距離で決まります。
これをモーメントアームと言います。
※正確には、力の作用するラインから回転軸までの距離のことです。
このモーメントアームが長ければ長いほど、関節・筋肉への負荷が大きくなります。
つまり、股関節を鍛えたければ股関節のモーメントアームを長くするように工夫すれば良いということになります。
通常のスクワット
通常のスクワットは臀部・膝関節にバランスよく負荷がかかっている状態です。
スタートポジションとしては、脚幅は肩幅程度で、つま先は少し開くというのが基本姿勢です。
脚幅を肩幅にする理由は
- 脚を閉じていると股関節が曲げにくい
- 脚を開きすぎていると股関節中心の運動になってしまう
という理由です。
つま先を少し開く理由は
ポイント
つま先が真っすぐだと、knee in(スクワット時に膝が内側に入る)状態になりやすいので膝などにケガのリスクがあるという理由です。
図の解説
- 青い線:重心線
- 赤い線:体軸線
- 緑の線:モーメントアーム
緑の線が長いほど、その関節に負荷が高いということになります。
そして、図のように股関節を少し曲げ、前傾姿勢になりながら膝も曲げていきます。
この時に腰が曲がらないようにしましょう。
腰が曲がると、腰モーメントアームが長くなり、腰に負荷がかかってしまいます。
身体の重心から股関節・膝関節のモーメントアームが均等になっていると股関節・膝関節ともに同じように負荷がかかっています。
そのため、バランスの良いスクワットとなり、ケガをしにくいスクワットとなります。
バーベルなど重たい重量を扱う際は、このようなバランスの良いスクワットが良いです。
悪い例
腰に負担がかかる
スクワット時に腰が丸まっている状態だと、腰部に強い負荷をかけてしまいます。
スクワットは本来、股関節・膝関節をメインに行うものなので、腰に負荷のかかるフォームでは腰痛を引き起こします。
図のように、腰からのモーメントアームが長くなってしまうことで腰部への負荷が高まります。
腰部の負荷が高まり、股関節・膝関節と負荷をかけたい部位の負荷が減ってしまいます。
腰が丸くならないように気を付けましょう。
股関節(臀部)を鍛えるスクワット
臀部を主に使うスクワットは、股関節をしっかりと曲げるということです。
バーベルスクワット
重たいバーベルなどを持ってスクワットする場合であれば、重心線の延長線の辺りにバーベルが来るように持ちます。
そして、股関節のモーメントアームを長くするように股関節を屈曲させます。
この時に、先ほどの悪い例の様に腰が丸まらないように注意しましょう。
図のように股関節をしっかりと曲げることで、股関節のモーメントアームが長くなり股関節にしっかりと負荷がかかります。
自重スクワット
自重で股関節への負荷を高めたい場合も、股関節をしっかりと曲げるというところは同じです。
それに加えて重心線を前に持ってくるというテクニックがあります。
図のように、両手を前に伸ばすことで、身体の重心線は手を伸ばさない場合よりも重心が前に移動します。
さらにペットボトルのような重りを両手に持つことで、より重心位置を前方へ移動させることができます。
重心線が前に移動することで股関節からのモーメントアームが長くなり、股関節により負荷をかけることができます。
膝関節を鍛えるスクワット
膝関節を鍛えるスクワットは、重心線を後ろに持ってくるというと事が重要です。
重心線を後ろに移動させることで膝関節からのモーメントアームが長くなり、膝関節への負荷が高まります。
一時、部活動などで膝を出さないスクワットを行うことが流行しましたが、これは膝関節に負荷をかけるスクワットです。
空気椅子などもこの原理で重心を後ろに移動させることで膝関節に負荷がかかります。
注意点
股関節・膝関節に負荷をかけるスクワットについて説明しましたが、極端にどちらかの関節に負荷をかけるように行うことはあまりよくありません。
負荷が強すぎてケガに繋がることがあります。
特に、膝関節はオスグットシュラッター病・膝蓋靭帯炎などのケガを引き起こしやすいので注意が必要です。
極端に行うのではなく、70:30 や 60:40など比率を少しずつ変えてスクワットで鍛える部位を狙っていくことが良いかと思います。
まとめ
今回はスクワットのバイオメカニクスについて解説しました。
スクワットは奥が深く、フォーム次第で負荷がかかる場所が変わります。
バイオメカニクスを理解してスクワットを行うと、ワンランク上のトレーニングができるかと思います。
スクワットのフォームを考えながらトレーニングを行いましょう。
ありがとうございました。