今回は『クールダウンの方法・効果は?』です。
クールダウンについてご存じでしょうか?
トレーニングが終わった後など、疲れもあってクールダウンをしない方もおられると思います。
クールダウンはしているけど、何をどのようにしたらいいかわからない方も多いと思いますので解説されて頂きます。
クールダウンとは
クールダウンとは、主に運動後・トレーニング後に行うものです。
効果としては
クールダウンの効果
- 筋疲労の回復
- 筋腱障害の予防
- 筋肉痛の緩和
- パフォーマンスの改善
などの効果があると言われています。
クールダウンの効果
先ほどもクールダウンの効果を書きましたが、効果が実際に出ているものと効果があるかないか曖昧なものがあります。
それらについても解説していきます。
クールダウンの種類
クールダウンには定められた方法はなく、様々なクールダウンの方法があります。
クールダウンの方法
- ストレッチ
- マッサージ
- 動的なクールダウン
などがあります。
ストレッチの効果
クールダウンでストレッチを行うと、脊髄興奮性が低下します。
脊髄興奮性とは、運動により神経が活発になり筋肉が活動しやすくなっている状態のことです。
ストレッチにより、脊髄興奮性を抑えることでができるため、身体の筋肉を落ち着かせるために重要です。
ストレッチも、反動をつけるストレッチ(動的ストレッチ)よりもじっくりと筋肉を伸ばす反動を使わないストレッチ(静的ストレッチ)の方が脊髄興奮性を低下させるという結果が多いかと思います。
動的ストレッチは効果がないわけではなく、あくまで脊髄興奮性を下げるのは静的ストレッチの方が効果が高いということです。
脊髄興奮性に関しては低下して、いわゆる筋肉を落ち着かせる状態にすることは可能ですが、筋肉が回復するというわけではありません。
6)の文献では、ストレッチで疲労回復効果はあるかもしれないが、筋の伝導速度の回復に関してはストレッチでは効果がないと書かれています。
伝導速度とは、筋肉に脳から神経を通して筋肉に指令を送る速度のことです。
つまり、筋肉の疲労感の改善はあるかもしれないが、伝導速度の改善はないので筋肉の完全な回復ではない(あくまで自覚的な感覚的回復)と捉えることができます。
マッサージの効果
運動やトレーニングをすると、筋血流が増加し、その周囲の組織の間隙にも水分が増加するといわれています。
クールダウンでマッサージを行うと組織間隙にある水分量が優位に減ることもわかっています。
運動終了10分後までの回復にクールダウンで何もしないのとマッサージをするのでは、大きく差があるそうです。
その水分量を減少させることが疲労の回復につながると考えられています。
動的なクールダウンの効果
クールダウンは、ストレッチ・マッサージなど静的なものばかりではありません。
軽い運動を行うことで乳酸値の減少を図ることもできます。
乳酸を減らすのに最適な運動強度は
乳酸を減らすのに最適な運動強度
- 自転車駆動では40%VO2max程度3)
- ランニングでは65% VOZmax程度4)
- 水泳では70%VOZmax程度5)
と言われています。
VO2maxとは、最大酸素摂取量のことで、高価な機械を使用ないと計測できません。
最大心拍数の何%かで代用することができます。
40%VO2max=最大心拍数の58%
65% VOZmax=最大心拍数の77%
70%VOZma=最大心拍数の81%
最大心拍数は、220-年齢で出すことができます。
最大心拍数の計算方法
例)
30歳の方であれば、220-30=190
この190が最大心拍数です。
40%VO2max=110回
65% VOZmax=146回
70%VOZma=153回
ということになります。
他には2)の文献では、自転車漕ぎでの乳酸濃度の減少について研究されております。
そこでは、10分間のクールダウンで自覚的運動強度(自分で感じる運動強度)で"楽である~ややきつい"レベルで自転車をこぐことが一番乳酸濃度が低下すると書いております。
ジムなどでトレーニングをした後は、クールダウンとして10分間、楽である~ややきつい範囲でエアロバイクを実施することが有効かと思います。
注意点
乳酸を除去することで筋肉の疲労が回復すると思っておられる方もいると思いますので少し解説させていただきます。
筋疲労は乳酸だけではありません。
正確には、筋疲労は完全に解明されているわけではないということです。
いくつか調べた中で出てきた説を紹介します。
疲労乳酸説
筋疲労は一般的には、乳酸が溜まって筋肉が動きにくくなるという考えが広まっているかと思います。
しかし、乳酸だけが疲労物質でないことも証明されてきているそうです。
1)の文献に、運動させたラット(ねずみ)の血液中の乳酸値が上昇しているが、元のレベルまで乳酸値が低下しても、動くことは困難である。と記載されています。
これより、乳酸だけで疲労が説明できるわけではないことがわかります。
そのため、乳酸をなくしたからと言って"完全な回復ではない"ということはご理解ください。
疲労トリプトファン-セロトニン説
トリプトファン-セロトニン説はあまり一般的な広がりはありませんが、トリプトファン-セロトニンが疲労に関係しているという仮説もあります。
トリプトファンはアミノ酸の1つで、運動中の血中アミノ酸の組成変化でトリプトファンが増加します。
このトリプトファンが脳へ以降し、セロトニン合成が活性化されます。
セロトニンは睡眠物質としても有名であり、このトリプトファン-セロトニンが増加することが疲労の原因とも考えられているそうですが、様々な文献を読んでいるとその説の可能性は小さそうです。
まとめ
疲労回復については、様々な研究がなされていますが解明できておりません。
そのため、これが良いというはっきりと言えるクールダウン方法はありません。
色々な疲労物質説があり、今はあくまでも乳酸は一つの疲労物質であると考えられているので、上記に乳酸を除去する方法なども記載させて頂きました。
現在は、ストレッチ・マッサージ・動的なクールダウンを主なクールダウンとして実施して良いかと思います。
まだわからないことも多いので、クールダウンについて勉強してまたブログに書きたいと思います。
ありがとうございました。
参考・引用文献
- 渡辺 恭良 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)129,94~98(2007)疲労の分子神経メカニズムと疲労克服
- 岩原 文彦ら 体力科学(2003)52,499~512 自転車駆動による無酸素性運動後の効果的なクー リングダウン強度について
- Belcastro, N. A, and Bonen, A. Lactic acid removal rates during controlled and uncontrolled recovery exercise, J. Appl. Physiol., (1975), 39, 932-936.
- Bonen, A. and Belcastro, N. A. Comparison of self selected recovery methods on lactic acid removal rates, Med. Sci. Sports., (1976), 8, 176-178.
- Cazorla, G. Dufort, C. and Cervetti. P. J. The influ. ence of active recovery on blood lactate disappear ance after supramaximal swimming, In Hollander, P., P. A. Hunijing, G. deGroot [eds.], Biomechanics and Medicine in Swimming, (1983), 14, 244-250.
- 市橋 則明 運動生理6(4):181-185,1991.筋疲労回復におけるストレッチングの効果―筋電図の周波数解析による検討―